はじめに
金融機関からの資金調達が厳しくなる中、届出が必要ない簡易な手続きで資金が調達できる少人数私募債が注目を集めています。そこで、少人数私募債の概要説明と利用時の留意事項を解説してみました。
少人数私募債が発行できる条件
・株式会社のみ発行できる。
・社債の購入者は50名未満
ただし、過去半年以内に私募債を発行していればその人数と通算する。
・社債の一口の最低金額が1/50未満
・募集の対象者は経営者個人、経営者の親族、知人、社員、取引先などの縁故者(発行後の第三者への譲渡も予定していない)
・官庁などへの届出は必要ない
少人数私募債のメリット
・利息は後払い(半年後、1年後)
・元金は償還時一括返済でいい
・物的担保がなくても信用があれば発行できる。
そのため、担保設定の登記費用、印紙税、登録免許税などがいらない。
・保証会社もいらないため、保証料もいらない。
・経営者が会社に資金を貸し付けて利息を受け取っている場合、貸付金の受取利息は総合課税の対象となる。しかし、社債からの受取利息は20%の源泉徴収ですむ。
・区からの利子補給
東京都文京区が、区内に本社をもつ中小企業に対して、少人数私募債の発行の利子補給事業を始める(2003年度から実施予定)。発行額3千万円、年2%の利率を2年間、最大60万円を区が負担する。
・自社や経営者を信頼して資金を提供してくれた人を裏切れないので必死に頑張るようになる。
少人数私募債発行の際の決定事項
・次の事項を発行に際して取り決める。
(1)社債の募集総額
(2)社債の一口の金額
(3)社債の利率
(4)償還期間と償還方法
(5)中途換金の方法
・取締役会の決議事項として、出席取締役の過半数の賛成が必要
・社債券は発行しなくてもよい。社債原簿(管理台帳)を作成しておけばいい。それと、社債発行期間を何年にも渡るため、その間に資金提供者が死亡することもあり得る。そうなると、社債券は相続財産となるので、社債券は発行しなくても事実が明確になる書類は作成、保存しておく必要がある。
また、社債券は印刷しなくても、利札は印刷して応募者に渡すことが多い。
少人数私募債発行を成功させるための条件
・私募債の引受者を集めて事業計画の説明会を開き、決算書を含めた情報開示を積極的に行う。そして、いかに自社が魅力的で将来有望な企業かを理解していただく。
・説明会で私募債発行の理由を明確に説明する。その際、設備資金に充てるため5年の発行期間とするなど発行理由と発行期間が整合していることが大前提。
少人数私募債の実践的利用方法
・発行金額は必要金額からでなく、「応募者期待人数×出資可能金額」から考える。
・社員には募集しない。
・サラリーマンや主婦のように事業者ではない人にも積極的に勧誘する。
満期一括償還の場合、償還金額の半額程度は満期までに専用の銀行口座を作り、プールしておく。
・私募債の発行者も資金提供者も対等の取引をしたと納得できることが発行の前提。そのため、社債利率は低くしない。ただし、高くしすぎると会社の経営状態が悪いのではないかとも思われるため、さじ加減が問題となる。
・あまり濃密な利害関係がからむ団体の中に、私募債の話を持ち込まない。
・私募債申し込みを希望する第三者がいた場合、償還日に社債を償還できなかったときのリスクを考えると避けた方が賢明である。
・社債の償還前の随時償還を認める場合、利息は通常よりも引き下げる方がいい。
少人数私募債についての個人的意見
ともすれば発行時の簡易さだけで少人数私募債は注目を集めていますが、何年もの期間にわたり身内・知人などの間で何千万円ものお金を貸し借りするという「こわさ」に十分に注意する必要があると考えています。
また、期限一括返済という返済方法は返済する方にとってはかなりの負担になります。そのため、少人数私募債の発行期間に渡って返済資金を貯めていき、その蓄積状況を毎年資金提供者に開示するという仕組みにしておく必要があるのではないかと個人的には考えています。
